白昼夢
この町は異常だ。もしかしたら私の見ていないところでは平和なのかもしれないが。
それでも私の見ているこの町は『異常』だ。
だからこの路地裏に人が入り込んできた時もこの町は『異常』なのだと思い続けていた。
その少年はこの路地裏に一人で入ってきた。
私は哀れな哀れな犠牲者のために再び涙した。
「どうしたの?」
――話しかけないで
「人を・・・殺してしまったの」
答えたくないのに、言葉が口から滑り出る。
「え・・・と・・・?」
少年が戸惑っている。
――この少年と話してはいけない
「何人も、何十人も・・・もう、数えられないほど殺してしまったの」
それなのに、言葉が止まらない。
「へぇ・・・すごいね」
「すごくないの。こんな能力いらないの」
――これを能力というのなら
「もう誰も殺したくないの」
私に殺された人は、その存在すら残らない。
「あなたも、来ないで」
この少年と関わってはいけない。
「あなたはイイヒトだから、殺したくないの」
それなのにこの少年と話し続けたい。
「だから、来ないで」
・・・苛々する。
「これ以上、私の『世界』に踏み込まないでっ!」
苛々、する。
「・・・・・・っ?
なに訳わかんないこと言ってんだよ!」
――私にだって、わからない
突然、手を掴まれた。
少年と、目があった。
真っ黒な瞳。怒気をはらんだ目。
何故この少年は私に構うのだろう。
「あ・・・春奈・・・?」
「秋人・・・?」
「「・・・・・・誰?」」
見たことのない子。
きいた事のない名前。
それなのに
私はこの子を知っている。
*
私は昔から夢をみる。正確には『見た』ことを全て覚えている。
『見た夢を全て覚えている人間などいない』
誰かが、そう言っていた。
*
少年は少女と出会い、少女は少年と出会う。
それはほんの偶然から始まった。
白昼夢の中で私たちは真実を見つける。